旅する植物油
先日某テレビ局で、世界で廃食油の争奪戦がおきているという特集がございました。運航時に大量の二酸化炭素を放出する航空燃料(灯油に近い成分)の代替として廃食油由来のSAF(持続可能な航空燃料)を使用する事で約8割のCO2を削減出来るとの事ですが、私は違和感しか感じませんでした。
元々日本では、廃食油の約半分は飼料へカロリーアップの目的で添加され使用されてきましたが、不足してきた為に飼料が高騰し(戦争も追い打ちをかけている)、結果として畜産業を圧迫し、食品価格も上昇しています。
また、一部の廃食油は化学品の原料に使用されたり、軽油代替のバイオ燃料の製造に使用されてきました。私の認識では、日本国内に於いては需要と供給がバランスしていると考えておりました。
ここ1年以内でしょうか? 廃食油、廃油(鉱物系、合成系)が不足しているという事を耳にするようになりました。コロナ禍で稼働が落ちている事も理由の一つでしょうが、CO2を削減するという目的の為に、本来はこの部分に参入をしてこなかった大手企業や畑の違う上場企業が原料として使用しはじめた為に、バランスが崩れてしまったのです。世界的な規模の視点でみると、元々原料として廃植物油を原料として使用していた先からSAFの製造メーカー或いはその燃料の使用先が、CO2削減のお株を奪っただけのように思えてなりません。何もかわっていないどころか、新たな食糧問題を生み出しています。(持続可能ではありません)
戦争により、海外からの植物油が高騰しているという話を近年よく耳にしましたが、この植物油が日本国内で使用されて廃食油として排出され、これをかき集めた事業者がSAFの製造メーカーへ輸出、製造されたSAF或いはその副産物が日本国内に還流し、燃料油や原材料として使用されると、元々の植物油は形をかえて1往復半(製品が輸出されると2往復)旅する事になります。世界的な規模で考えた場合、本当にCO2の削減や持続的な社会の構築につながっているのでしょうか?